最高裁判所第二小法廷 昭和28年(オ)847号 判決 1955年6月24日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告人代理人土居万亀の上告理由第一点について。
被上告人は、本訴において、係争宅地五五坪二合二勺の全部について、上告人に対し自己のため売買に因る所有権移転登記を請求したところ、原判決は、その内被告人所有の居宅の敷地二五坪七合二勺について、被上告人の請求を容れたものであることは原判文上明らかである。かかる場合において原判決が上告人に対し、「分筆の上」右土地の部分につき所有権移転登記をすることを命じたからといつて、所論のように、被上告人の申立てない事項について判決をしたものとすることはできない。
同第二、三点にいて。
一筆の土地といえども、これを区分して、その「土地の一部」を売買の目的とすることはできる。そして右「土地の一部」が、売買の当事者間において、具体的に特定しているかぎりは、分筆手続未了前においても、買主は、右売買に因りその「土地の一部」につき所有権を取得することができるのである。論旨引用の大審院判例は、その後同連合部判決により変更されたものである(大正一三年一〇月七日同一二年(オ)第六七二号連合部判決参照)。そして、原判決が本件売買契約の目的とされたものと認定した「土地の一部」は、被上告人所有居宅の敷地として、当事者間に特定されていることは原判文上明らかであるから、原判決が被上告人は売買に因り右土地の部分につき所有権を取得したものと判示したのは正当である。(所論分筆登記請求権の消滅時効については上告人の原審において主張しないところである。)所論はすべて採用することを得ない。
同第四点について。
原判決は、上告人の本件土地に対する占有を認めなかつたのであるから、所論取得時効の主張の理由のないことは自明である。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い全裁判官一致の意見をもつて、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田克)